2024年度の金融市場調節
2025年6月4日
日本銀行金融市場局
要旨
日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現の観点から、2024年度を通じて、短期金利の操作を主たる政策手段として、金融政策を運営した。具体的には、金融市場調節方針として、7月の金融政策決定会合までは、政策金利である無担保コールレート(O/N物)を0~0.1%程度で推移するよう促すこととした。その後、7月の金融政策決定会合では、同レートを0.25%程度で推移するよう促すこと、2025年1月の金融政策決定会合では、同レートを0.5%程度で推移するよう促すことを、それぞれ決定した。この間、長期国債の買入れについては、2024年7月の金融政策決定会合において、月間の買入れ予定額を、原則として毎四半期4,000億円程度ずつ減額し、2026年1~3月に3兆円程度とする計画を決定した。
こうした金融市場調節方針等のもとでの短期金融市場や国債市場の動向および各種のオペレーションの運営のポイントを整理すると、以下の通りである。
短期金融市場
短期金融市場では、無担保コールレート(O/N物)は、地銀等の補完当座預金制度の適用先が積極的に資金調達を行う構図が続くもと、日銀当座預金への付利金利(補完当座預金制度の適用金利)を若干下回る水準で極めて安定的に推移した。GCレポレートは、2024年度入り後しばらくは日々の変動が比較的大きい状況が続いたが、夏場以降はプラス金利が定着するもと、銀行等が、保有する国債を有効活用してレポ市場での資金調達を積極化させたことなどから、レート水準が切り上がるとともに安定化し、付利金利により近接して推移するようになった。
長期国債の買入れと国債市場の動向
長期国債の買入れについては、2024年7月までは、月間6兆円程度の買入れを継続し、8月以降は、7月に決定した減額計画に沿う形で、毎四半期4,000億円程度ずつ買入れ額を減額した。その結果、2025年1~3月の国債買入れ額は13.5兆円(月間4.5兆円)と、量的・質的金融緩和が開始された2013年4~6月以降で最も低い水準となった。この間の残存期間別の減額の状況をみると、日本銀行では、一定の予見可能性を確保する観点から、各残存期間の毎月の発行額に対する日本銀行の買入れ比率が高い年限から優先的に減額するという考えを基本に据え、残存「10年以下」の買入れ額を優先的に減額した。
国債買入れの減額が進捗するもと、長期金利は、金融市場においてより自由に形成されるようになり、(1)日本銀行の政策金利が0.5%程度まで引き上がったことに加えて、(2)わが国の堅調な経済・物価指標等を受けて、市場参加者の間で先々の政策金利の引き上げ期待が高まったことなどを背景に、2024年度を通じてはっきりと上昇し、2025年3月下旬には、一時2008年10月以来となる1.59%を記録した。
CP等および社債等の買入れ
CP等および社債等については、2024年3月の金融政策決定会合で決定された「買入れ額を段階的に減額し、1年後をめどに買入れを終了する」との方針に沿って、買入れ額を段階的に減額し、2025年1月のオファー分をもって買入れを終了した。減額ペースが緩やかであったこともあり、買入れの終了がCP・社債市場へ与えた影響は、極めて限定的であった。
その他の資金供給
その他の資金供給オペの状況をみると、貸出増加支援資金供給は、経済・金融情勢に応じて適度な利用インセンティブを与える観点から、変動金利貸付に変更されるもとで、2024年9月貸付け以降、全体としては利用スタンスが後退し、残高が減少に転じた。一方、気候変動対応オペは、対象投融資残高の増加が続くもとで、金利先高観を踏まえた低利かつ固定金利での安定的な資金調達の観点等から、引き続き積極的な利用がみられ、残高の増加が続いた。
国債補完供給
この間、国債補完供給については、前述した日本銀行による国債買入れの減額等に伴う国債の市中保有額の増加などから、利用額は全体として減少したものの、相応の銘柄では引き続き恒常的な利用がみられた。こうしたもとで、日本銀行では、保有するすべての利付国債・国庫短期証券の銘柄を対象としてオファーする措置等を継続し、毎営業日、オファーを実施した。このほか、日本銀行の保有比率が極めて高いチーペスト銘柄等を対象に、日本銀行が「流動性改善に資する」と判断した場合には、国債補完供給にかかる減額措置(日本銀行が貸し出した国債をオペ先が買い取る措置)を認める方針を明確にするなど、これらの銘柄の需給逼迫感の改善にも努めた。
オペレーションの実施回数
以上のような金融市場調節のもとで、日本銀行が2024年度に実施したオペレーションの回数は、国債買入れを中心に減少し、全体では879回(2023年度は1,340回)と、量的・質的金融緩和が開始された2013年度以降では、2013年度に次ぐ少ない回数となった。
日本銀行から
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